ある朝、目を覚ますと
昨日まで家の目の前にあった海が、200m遠くまで逃げていた
それでも子供達は200m先の海を追いかけて、遊びに行った
そのまた次の日、海はさらに400m先にまで遠ざかっていた
もう誰も海に泳ぎに行こうとはしなかった
これはおとぎ話でも黙示録の一節でもない。
中央アジアはアラル海沿岸の漁村で20年ほど前に実際に起こったことで、これはその村人の体験談だ。
40年にわたる過剰で雑な河川からの取水の結果、約150km(東京〜名古屋間に匹敵)も海岸線が後退した。海の大きさは往時の3分の1まで減り、塩分濃度が上がって、まず魚が死んだ。そして漁業が死に、それを生業としていた地域の共同体が死んだ。そして最後に残された人々は、砂嵐ならぬ“塩嵐”に襲われ、気管系の疾病を患い緩慢な死を迎えようとしている。
21世紀は“水の世紀”になるだろうと言われている。20世紀が“石油の世紀”だったのに対し、今世紀は水を奪い合って国家が、人が殺し合うだろうと予測されているのだ。アラル海のできごとは、そんな暗い時代の到来を告げる先触れのようなものかも知れない。
TVで冒頭の村人の話を聞いて、僕達はもしかしたら黙示録的な時代に生きているのかも知れないという気持ちにさせられた。「風の谷のナウシカ」の中で、人々が“火の七日間”以前の時代を捉えていたように、後世の人々は僕たちの時代を振り返るのかも知れないと、ふと思った。
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