2008年12月8日月曜日

海外で評価された日本映画

記述日時:2007年12月14日11:46

先日、『無法松の一生』という古い日本映画を観た。

これって『ニュー・シネマ・パラダイス』元ネタなんだろうな〜。全く違うストーリーなんだけど、要所要所がはっきりと似ている。

この映画は1958年にヴェネツィア国際映画祭で話題になった(金獅子賞受賞)から、リアルタイムでないにせよ(当時トルナトーレは2歳くらい)影響を受けたとしても不思議じゃない。

『ニュー・シネ〜』は大好きな映画だけど、この『無法松〜』も大好きになった。


実を言うとついつい最近まで邦画が大の苦手だった。

大好きと言える邦画はちょっと思いつかないし、どんだけ大ヒットしてる作品でもいずれ地上波で見れば充分と思っていた。タダ券をもらって観に行っても、つまらなくて途中で劇場を出たこともあった。

いや、最近の邦画はつまらないけど昔の日本映画はすごかったんだ、と言う人もいる。クロサワ、オヅ etc.

そうかと思い、学生の頃リバイバル上映していた『七人の侍』を観に行った。この映画は「キネ旬」の歴代邦画ベスト作品にも選ばれるくらいだし、誰もが認める邦画の最高傑作。だからもしコレが面白く感じられなかったら、自分には邦画は向いてないと思ってもいいだろう。

果たしてその通りになった。

今思うと音声の劣化が酷くて字幕無しではツラかったのもあると思う。決して悪い映画じゃなかったが、正直「これが最高傑作なら、後は推して知るべし」と結論したわけだ。それ以来、邦画を積極的に観た覚えはない。


あれから約15年、思いがけず邦画をいっぱい観るハメになった。仕事のリサーチで日本の名画を集中的に観る必要ができて、TSUTAYAでDVDを借りまくった。

ざっとタイトルを挙げると

『雨月物語』溝口健二(1953)
『狂った果実』中平康(1956)
『隠し砦の三悪人』黒澤明(1958)
『無法松の一生』稲垣浩(1958)
『豚と軍艦』今村昌平(1961)
『天国と地獄』黒澤明(1963)
『飢餓海峡』内田吐夢(1965)
『サンダカン八番娼館 望郷』熊井啓(1974)
『楢山節考』今村昌平(1983) 
『AKIRA』大友克洋(1988)
『ソナチネ』北野武(1993)
『GHOST IN THE SHELL』押井守(1995)
『バトル・ロワイヤル』深作欣二(2000)
『殺し屋1』三池崇史(2001)


これらの映画に共通するのは“海外で評価された”ということ。

ゴダールは溝口の大ファンで、『狂った果実』はヌーヴェル・ヴァーグに影響を与え、『隠し砦の三悪人』は『STAR WARS』の元ネタとなり、スコセッシは今村の作風を真似、タランティーノは日本のポップ・ヴァイオレンスが大好きで、2本の劇場用アニメは欧米のジャパニメーションに対する見方を変えた etc.

これら巷間でしばしば語られる“邦画が海外に与えた影響”を自分で確認し、その理由を理解するのが今回のリサーチのテーマだった。

で、半ば義務的に観始めた。過去の経験から苦行になりかね無いとも危惧したが、邦画に関して無知だったことが幸いし、まるで外国人のような新鮮な感覚で接することができた。

黒澤作品はやはり自分にはさほど響かなかったが(いまいち向いてないらしい)、『飢餓海峡』には度肝を抜かれた。正直、昔の日本映画がこれほどオリジナルだとは思わなかった。

今まで洋画ばかり観てきた自分には、もしこの映画の制作年を知らなければ、洋画のパクリだと思ってしまいそうな前衛的手法や奔放な性表現。しかし、この日本映画が先だったとは・・

一方、欧米の一部で人気があったとされる近年のヴァイオレンス系の作品は正直もう一つだった。これらに関しては、やはり自分が“日本人”であることが邪魔をしたようだ。もし自分が日本語ができなくて、字幕で観るような立場だったら“幸運な誤解”ができたかも知れない。(相変わらず日本語の科白が聴き取りづらいのはナゼだ?)

ただ、欧米人がこれらの作品を好むのは何となく判るような気がした。

その辺を書き出すと長くなるので簡単にまとめると、19世紀半ば以降に日本文化が欧米でブームを起こしたときと通底する理由がある気がする。道徳的な縛りが曖昧で、何よりも視覚的な美を重視すること。それはとりもなおさず日本文化の特質とも言うべきもので、その異質さゆえに時々西欧文化の自己改革に利用されてきたように思える。つまり近現代の世界における主流文化(メイン・ストリーム)が西欧文化だとすれば、日本文化は最も強力なカウンター・カルチャーだということだろうか。

いずれにしても、仕事的にも個人的にも過去の日本映画に好きな作品を幾つか発見できたのは良かった。

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